研究概要 |
CO_2の地中処分においては,帯水層の上部に存在する不浸透性の地層が帽岩(キャップロック)の役割を果たしてガスが封入されることを前提にしているが,地層中の断層や割れ目を通じてガスのリークが発生することが懸念される。本研究では,CO_2ガスを封入した帯水層からのガスリークを止める対策技術として,ゲル生成剤(ポリアクリルアミド,アルミン酸ナトリウム,水酸化ナトリウムの混合水溶液)の注入によるCO_2ガスリークの補修の可能性を,室内実験および数値計算により検討する。 本年度は,多孔質媒体コア(ガラス管内に212μm〜250μmのガラスビーズを充填したコア)を用いた流動実験装置を組み立て,ゲル生成剤の注入によるガスリーク補修の効果を検討した。実験では,コアを水飽和後にCO_2ガスを流して模擬的なガス貯留層を作成後,コアの上部にゲル生成剤を圧入し,圧入の前後におけるCO_2ガスの有効浸透率の変化を計測した。また,コア内のゲルの生成状況を把握するために,ゲル生成剤中にフェノールフタレインを添加して,pH変化に伴う色の変化をビデオ観察した。その結果,コア上部にゲルが生成して一時的にはCO_2ガスのリークを遮断する効果が認められたものの,ガスの産出と同時にゲルがコア外部に押し出されて,継続的にガスの有効浸透率を低下させることはできなかった。この原因としては,コア内で泡状のゲルが生成するために,その後にガスでこれを後押しすると,泡が易動度のバッファーとして働き,逆にコア内の水を排出する効果を促進することが考えられた。この問題は,ゲル生成剤に添加するポリアクリルアミドの加水分解率,ゲル生成剤の圧入処理手順を変えることにより解決すると考えられるので,今後は実験を継続してガスリークの補修の可能性を詳細に検討する予定である。また,来年度は,数値計算による補修効果の検討を行う。
|