研究概要 |
静的破砕剤の岩石破砕機構を明らかにするため,昨年度は1辺20cmの立方体形状供試体の中央に直径5cmのボーリング孔を穿孔し,これに水を加えた静的破砕剤を充填して,モルタル供試体を破砕する実験を行った.静的破砕剤は,CaO+H_2O=Ca(OH)_2の化学式で表される水和反応に伴う体積膨張によって材料を破砕するもの理解されているが,反応に伴い熱も発生する.昨年度の実験では,巨視的亀裂発生直前のAE震源は供試体外側に集中し,亀裂は破砕孔からではなく,供試体外側で発生し破砕孔に向って進展する傾向がみられ,破砕に熱応力が大きく影響している傾向が認められた.しかし,静的破砕剤の破砕効果として熱応力の影響に着目した研究はいままでほとんどないため,今年度は1辺30cmのひと回り大きな立方体供試体を用い,内部の温度分布を詳しく実測して熱応力の影響をさらに詳しく検討した.さらに,現場の実務で多く遭遇する亀裂が存在する岩石を模擬することを目的とし,破砕孔にノッチをつけた実験を行った.これらのいずれの実験においても,亀裂は供試体外側から発生する傾向が明らかであり,破砕に熱応力が大きく影響していることが確認された.来年度は,今年より幅の大きなノッチを破砕孔につけ,熱応力に比べて膨張圧がより一層作用しやすい供試体において,なおかつ熱応力の影響が大きく現れるかどうかを確認するとともに,供試体の表面にひずみゲージを貼付し,AEの震源分布だけでなく,ひずみの測定結果からも亀裂の進展方向を明らかにし,静的破砕剤の破砕機構を解明していきたいと考えている.
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