研究概要 |
静的破砕剤の岩石破砕機構を明らかにするため,一昨年度は1辺20cm,昨年度は1辺30cmの立方体モルタル供試体を用い,供試体の中央に直径5cmのボーリング孔を穿孔し,これに水を加えた静的破砕剤を充填して,供試体を破砕する実験を行った.これらの実験では,15分程度の短い時間に反応が完了し比較的高い温度となる速効性の静的破砕材を用いて実験を行った.その結果,巨視的亀裂発生直前のAE震源は供試体外側に集中し,亀裂は破砕孔からではなく,供試体外側で発生し破砕孔に向って進展する傾向がみられ,破砕に熱応力が大きく影響している傾向が認められた.静的破砕剤は,CaO+H_2O=Ca(OH)_2の化学式で表される水和反応に伴う体積膨張によって材料を破砕するもの理解されているが、反応に伴い熱も発生する.しかし,静的破砕剤の破砕効果として熱応力の影響に着目した研究はいままでほとんど発表されていないため,熱応力が破砕に関与していることを主張するためには,十分な検討を行っておく必要がある. そこで今年度は,反応に12時間程度の長時間を要し温度の上昇もあまり著しくない遅効性破砕材を用い,熱応力の発生が抑えられ,膨張圧だけが作用する状態での破砕実験を行った.その結果,破砕孔周辺にAE震源が集中し,破砕孔から最小抵抗線の方向に亀裂が進展する傾向が見られ,速効性の場合は熱応力の影響が顕著であるが,遅効性の場合は熱応力の影響が乏しいことが確認できた.このことから,速効性破砕材を用いる場合の破砕設計においては,熱応力の関与を考慮する必要のあることが一層明確になった.
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