昨年度までの研究から、電磁探査法を、土壌・地下水汚染や埋設物等、地下浅部調査へ適用するために、GMR素子あるいはMI素子等を用いた小型・軽量の磁場センサの実用化が期待され、それらは小口径のボーリング孔内での磁場3成分受信を可能にすると考えられた。 本年度は、小型・高感度・広い周波数帯域など、それらの磁場センサの特長を生かせる探査法として、孔井を利用した電磁探査法(磁場3成分受信の電磁検層)について検討した。 まず、積分方程式法を用いた3次元数値計算について、従来の地表からの電気ダイポール送信用のプログラムを改良し、新たに、地中からの垂直磁気ダイポール送信を可能にするプログラムを検討・作成した。主な検討結果は次のようである。 1.受信点が異常体内部に存在する場合の散乱電場の計算方法について検討し、セル内のトータル電場から直接計算する手法を採用した。 2.セルの分別方法が電磁応答の精度に与える影響について検討した結果、異常体の形状や送受信点の位置により、最適なセルの分割数や形状が異なることが分かった。 さらに、作成したプログラムを用いて、孔井を利用した電磁探査法のシミュレーションを行い、次の結果を得た。 1.磁場の水平成分は異常体の上端及び下端でピークが発生し、磁場の垂直成分は異常体中心付近でピークが発生する 2.孔井内の送受信器は、その間隔が小さいほど、測定電磁場は大きくなり、解像度も向上する 3.電磁場の水平2成分の測定により、異常体の方向性を把握することができる 4.異常体の水平方向の広がりを捉えるためには、複数の孔井を利用した測定が必要であり、送信源の位置は異常体の中心から垂直方向に離れている方が把握しやすい 今後、これらの研究成果をもとに現地試験を重ねることによって、地下浅部探査法としての新しい電磁探査法の実用化が期待される。
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