環境問題の中でも水環境の問題は、我々の生活に直結する重要な課題であり、水に関連した地盤・岩盤の各種物性は電気比抵抗特性からの考察が重要である。本研究では、地下浅部の地盤環境をより高感度に効率良く把握するための電磁探査手法ならびに磁場受信センサを提案し、それら手法の地下浅部探査法としての特徴を明らかにすることを目的とした。 まず、磁場偏差を観測する電磁探査手法を提案し、微弱な磁場偏差応答を捕らえるための高感度受信センサとして、高温SQUID磁力計の電磁探査用磁力計としての可能性を検討した。その結果、最小感度は約0.85pT/√Hzであり、磁場偏差の測定は可能であることが明らかとなった。また、周波数帯域はDC〜100kHzであり、野外仕様に変更するなどの比較的簡単な改良により、周波数領域の電磁探査に適用可能であるが、100kHz以上の周波数の強い信号が加わると動作が不安定となるため、時間領域の電磁探査用センサとしては、測定困難になることが予想され、多くの開発課題が残されていると考えられた。 次に、小型・軽量の磁気センサとして開発著しい、巨大磁気抵抗(GMR)素子および磁気インピーダンス(MI)素子を採り上げ、それらの基本的特性を検討した。その結果、GMR素子・MI素子ともに、高透磁率材料の使用、スタッキング処理等を行えば、高感度・小型・安価な電磁探査用の磁力計システムを構築することが十分に可能であると考えられた。 さらに、それらの磁場センサの特長を生かせる探査法として、孔井を利用した電磁探査法(磁場3成分受信の電磁検層)を提案し、積分方程式法を用いた3次元数値シミュレーションを行って標準応答曲線を求め、探査法としての特徴を明らかにした。 今後、これらの研究成果をもとに、現地試験を重ねることによって、地下浅部探査法としての新しい電磁探査法の実用化が期待される。
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