研究概要 |
本研究では、植物トランスポゾンの転移制御機構の1つと考えられているDNAメチル化に関してキンギョソウのトランスポゾンTam3に着目し解析した。キンギョソウのトランスポゾンTam3は温度によってその活動が制御されるという特筆すべき性質が備わっている。まず,Tam3メチル化のレベルが温度によって異なることを見出し,Tam3に生じるメチル化レベルの変動を詳細に解析した。得られた成果は以下のように要約できる。 1)調べた全てのTam3コピーで温度に応じてTam3のメチル化レベルが変動することを確認した。これらのコピーは高温ではメチル化のレベルが上昇し、低温ではメチル化レベルが下がる。このメチル化の変化は世代を経ずに一個体の体細胞レベルで発生していた。 2)一方、Tam3の転移酵素遺伝子の発現レベルを転写産物の蓄積量、転写開始点および転移酵素タンパク質は温度によって違いは認められなかった。 3)Tam3転移酵素タンパク質は末端配列のシトシンにメチル化を施した場合、阻害されることをゲルシフトアッセイによって確認した。 4)高温によるメチル化程度はコピー間で大きな違いが認められた。従って高温でのTam3コピーの転移抑制は均一なメチル化によるものではないことが明らかとなった。 5)キンギョソウゲノム全体に低メチル化を誘導する5-aza-cytidineおよびethionineをキンギョソウカルスに与えてもTam3の転移は活性化されなかった。 以上の結果をまとめるとTam3の転移成制御に対してメチル化は同調的に現われるが、その関与は直接Tam3の転移を抑えることは限らない。従って、これまでの事例に反してメチル化がトランスポゾンの転移に直接関与していないという場合も考えられ、両者の関係を詳細に分析する必要がある。
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