研究概要 |
これまでに申請者らは、イネアントシアニン着色に関するPlw遺伝子を持つ同質遺伝子系統より2つのcDNA(OSB1,OSB2)を単離している。これらのcDNAは、bHLHドメインをもったc-myc型の転写因子をコードしており、トウモロコシのR及びB遺伝子とも相同性が高い。13年度はまずゲノミック配列のクローニングによりそのゲノム構造を明らかにした。その結果、OSB1遺伝子の下流にはOSB2の一部と全く同じ配列が存在することが明らかになり、Plw遺伝子座はこれらの遺伝子によるコンプレックスを形成していることが示唆された。 次に、両遺伝子をC及びA遺伝子を持つイネ系統に導入したトランスジェニックイネを作成して調べたところ、アントシアニンによる着色が生じることが明らかとなり、両遺伝子がアントシアニンの組織特異的な蓄積に関与することを明らかにした。14年度は、特に、得られたトランスジェニック植物で、種子組織で着色が見られるかどうかを確認したところ、頴花の外頴及び内頴、ふ先、には着色があり、さらに種皮及び果皮にも着色が見られたが、胚乳及び胚には着色が見られなかった。これらの原因は不明であるが、胚乳でアントシアニンを発現するには、組織特異性の高いプロモータなどを用いる必要性が考えられた。 さらに、Pl遺伝子以外にもイネのアントシアニン着色に関係する遺伝子として知られている、A及びC遺伝子を同定することも試みた。A遺伝子はトウモロコシとのシンテニーからはDER遺伝子に相当すると考えられるので、ムラサキイネから単離したDFR遺伝子をOSB1,OSB2と共にCのみを持つイネ系統に我々が開発したトランジェントアッセイで糊粉層に導入したところ、アントシアニンの着色が生じた。この結果、A遺伝子はDFRをコードする可能性が強く示唆された。
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