研究概要 |
1.コムギのVrn-1座近傍にマップされているマイクロサテライト遺伝子座領域をPCR増幅し,サイズ多型を解析した結果,5B,5D染色体上のVrn-B1及びVrn-D1に連鎖するDNAマーカーを開発することができた.詳細は下記の通りである. 〔Vrn-B1〕コムギ品種'Triple Dirk'の準同質遺伝子系統のうち,Vrn-B1型のTD(B)及び全劣性型のTD(C)を供試し,マイクロサテライト遺伝子座Xgwm408及びXgwm604をPCR増幅した.その結果,両遺伝子座ともにTD(B),TD(C)間で10bpのサイズ多型が検出された.そこで,両系統間のF2世代及びBF2世代を解析し,昨年度に開発したdCAPSマーカーXwg644-5Bも含めた連鎖分析を行い,4遺伝子座のマップ位置を明らかにした.Xgwm408は,Vrn-B1と4.1cMで連鎖し,しかも日本の品種(180-195bp)とVrn-B1型のMara, Bersee(118bp)との間で明瞭な多型が認められたので,Vrn-B1遺伝子導入のための選抜マーカーとして利用可能である. 〔Vrn-D1〕コムギ品種'Triple Dirk'の準同質遺伝子系統のうち,Vrn-D1型のTD(E)及び全劣性型のTD(C)を供試し,マイクロサテライト遺伝子座Xgwm212及びXgwm292をPCR増幅した.その結果,両遺伝子座ともにTD(E)とTD(C)の間でそれぞれ6bp,4bpのサイズ多型が検出された.そこで,両系統間のF2世代を解析し,3遺伝子座のマップ位置を明らかにした.Xgwm292は,Vrn-D1との間で7.3cMの連鎖が確認され,しかも日本の早生品種間でも214-222bpの間で多様な変異が存在することから,わが国の春播型・秋播型早生コムギ育種のための選抜マーカーとして有用なことを明らかにした.
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