コムギにトウモロコシの花粉を交配すると、トウモロコシの雄核はコムギの卵細胞と受精し雑種胚を形成する。しかし、胚発生初期にトウモロコシ染色体が完全に脱落し、コムギの半数体が形成される。本研究は、脱落過程を細胞学的に観察し、その原因を解明し、その知見に基づいて脱落を抑制する方法を見いだし、トウモロコシの遺伝資源をコムギ育種に利用する道を開くものである。 本年度は、脱落過程の観察のために2つの方法を考案した。1.テクノビット包埋切片による蛍光in situ hybridization法、2.ホールマウント・ゲノミック・in situ hybridization。1に関しては、これまでmRNAの所在を調べるために用いられてきたが、より高感度を必要とする染色体DNAに対するFISH検出法をインキュベーション前処理を検討することにより可能にした。2では、これまで困難とされていた植物での全組織FISHをプローブ標識法を検討し、感度の低いゲノミッククローンでもシグナル検出可能な方法に改良した。トウモロコシ花粉を交配したコムギの雌蘂から、初期胚を摘出し、押しつぶすことなくそのままトウモロコシのゲノムDNAをプローブとしてハイブリダイズした。その結果、トウモロコシ染色体の行動を3次元的に観察できた。また、雑種初期胚を右チューブリン抗体で調べ、トウモロコシ染色体の脱落は、動原体に紡錘糸が付着しないためであることを起こることを明らかにした。方法1については、論文にまとめ、2については、現在論文作成中である。
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