研究概要 |
剛毛品種IRAT109と貧毛品種IRAT212の光合成,蒸散および水利用効率を光-光合成曲線および大気湿度に対する反応について比較し剛毛性の効果を詳細に検討した。どの光強度でも光合成速度,蒸散速度とも剛毛性品種のほうが低かったが,光合成速度は約10%低かったのに対し蒸散速度は約20%低く,このため水利用効率は剛毛性品種のほうが高かった.光合成有効光量子束密度400μmolm^<-2>s^<-1>似上で両品種の拡散伝導度の差がほぼ0.4molm^<-2>s^<-1>で一定となったことから,この部分が剛毛性による葉面境界層抵抗の増大部分とみられた.湿度を変化させ異なる飽和水蒸気圧差(VPD)の下で比較したところ,拡散伝導度に対する光合成速度の反応は両品種で同一の飽和型曲線となったが,蒸散速度の反応は,それぞれのVPDで直線関係となり,剛毛品種は貧毛性品種に比べ拡散伝導度が小さい分だけ蒸散速度が低くなった.以上のことから,葉身の剛毛性は拡散伝導度を低下させ光合成速度よりも蒸散速度をより大きく低下させることによって水利用効率の改善に有効であることが明らかになった.剛毛性の遺伝について,剛毛性品種と貧毛性品種の正逆交雑によって得たF1,F2植物の葉身の毛性を調査したところ,F1植物はすべて剛毛性であり,F2植物では剛毛:貧毛=3:1に分離した.したがって,剛毛性は核の優性遺伝子支配の可能性が高いことが判明した.品種比較では剛毛性以外の性質も異なっている可能性があるので,次年度は,剛毛性以外の性質が比較的近い雑種集団を用いて剛毛性が光合成,蒸散および耐量性に及ぼす効果をさらに検討する予定である.
|