水稲の葉身傾斜角度が蒸散を含めた生理反応に及ぼす影響を知るために、人為的に葉身角度を調節した際の蒸散量・水利用効率の変化とその機構について検討した。 1/5000aワグネルポットを用いて出穂日に水稲葉身の先端にクリップを貼り傾斜を大きくする垂れ葉処理と、支柱と麻紐で葉身を結束し傾斜を小さくする収束処理を設け、無処理の対照区と比較した。垂れ葉区と収束区の蒸散量は対照区より小さかった。5時から18時まで連続的に風をあて続ける送風処理を行うと、対照区と垂れ葉区の蒸散量は差が見られなくなり、収束区の蒸散量も他の区との差が小さくなった。このことからイネの葉身の傾斜角度は葉面境界層を起因として蒸散量に影響を及ぼすことが推察された。また収束区および対照区において40日間調査を行った結果、収束区の蒸散量は登熟前期には対照区よりも小さかったが、登熟中期には等しくなり後期には対照区よりも大きかった。積算蒸散量および水利用効率は収束区で小さかった。しかし穂重のみを比較すると有意な差は見られなかった。 水田群落条件下で対照区と収束区を調査した結果、蒸散量および乾物増加量ともにポット実験と同様の傾向が認められた。 以上の結果から、直立した葉身のイネは蒸散量が少なく、水不足に対して耐性があると推察された。また乾物増加量は小さかったが穂重は等しかったことから、登熟期に直立した葉身を維持できるイネは、低水分状況下における稲作に有利であると考えられた。
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