有色素米は不思議な魅力あふれた食べ物であるが、なにゆえ身体に良いかについてはほとんど科学的究明がなされてこなかった。したがって有色素米の食品機能性に対して正確性・安定性が欠け、有色素米の評価にも混乱が生じている。本研究は有素色米が示す食品としての生理活性とその物質的裏付けとしての機能性化学成分の種類とその量を統一的に理解するパラダイムを確立し、有色素米を高付加価値米として評価し、その生産のための基礎的情報を得る目的で行うものである。今年度は、「有色素米の機能性化学成分の系統間差異:実験1」と「有色素米の機能性化学成分の生育環境変動:実験2」に関する実験を行った。実験1では、国内産の有色素米系統53種を栽培・収穫した。また、アジアイネ種内における有色素米の位置付けを明らかにするためにIRRIからCore Sample(216系統)を導入した。これらの試料は玄米の外観的形質の調査と無機成分(Fe、Ca、Mg、Mn、Zn)の定量を行った。有色素米の無機成分含量には系統間差異が存在し、FeとMnは変異が大きく、Mgは小さかった。赤米と紫黒米のCaとMnの各含量は明らかに普通米に比べ高い値を示したが、Feむしろ低かった。MgとZnの各含量は普通米に比べて紫黒米は少なく、赤米は同程度であった。実験2では、経時的に種子を採取し、無機成分の推移を調査した。米粒の乾物重は出穂後4週間目で最大に達し、それ以降値を維持した。米粒の生育に伴う無機成分含量を調べた結果、CaおよびZn、Mnは1週目から3週間目にかけて急激に減少し、それ以降暫減する様相を示し、FeとMgは4週間目以降に暫減する様相をそれぞれ示した。以上の結果、種子の生育段階で機能性無機成分含量は変動し、また系統間で機能性無機成分含量に差異が存在することが明らかにされた。これらの知見は、環境制御あるいは遺伝資源の利活用により機能性色素および機能性無機成分を効率良く、かつ大量に生産可能であることを示唆した。
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