有色素米は不思議な魅力あふれた食べ物であるが、なにゆえ身体に良いかについては科学的に究明がなされてこなかった。本研究は有素色米が示す食品としての生理活性とその物質的裏付けとしての機能性無機成分・色素の種類とその量を統一的に理解するパラダイムを確立し、有色素米を高付加価値米として評価し、その生産のための基礎的知見を得る目的で行った。実験1「有色素米の機能性無機成分の品種間差異」では、アジアイネの有色素米品種の玄米外観的形質調査と無機成分の定量を行った。有色素米の無機成分含量には品種間差異が存在し、FeとMnは変異が大きく、Mgは小さかった。各無機成分には特異的に高含量を示す品種が見出されたが、一般的には赤米と紫黒米のCaとMnの各含量は明らかに普通米に比べ高い値を示し、Fe含量むしろ低かった。MgとZnの各含量は普通米に比べて紫黒米は少なく、赤米は同程度であった。実験2「有色素米の機能性無機成分の成育環境変動」では、紫黒米を用いてN、P、Kの三要素とFe、Ca、Mg、Znの微量要素の各施肥試験を行った。Ca含量はほとんどの肥料要素の施用で増力傾向を示した。Fe含量はN、P、Kの施用で増加傾向を、Fe、Ca、Mg、Znの施用で減少傾向を認めた。Mg含量はPの施用で増加傾向を、NとKの施用で減少傾向が見られた。Zn含量は紫黒米とコシヒカリとで反応が異なりN、P、Kの施用によりコシヒカリでは増加したが、紫黒米では減少した。実験3「有色素米の生理活性の品種間差異」では、有色素米品種の生理活性をラットレンズ汚濁アッセイとラット肝細胞アセトアミノフェンアッセイにより評価した。紫黒米と赤米でラットレンズ汚濁抑制活性が特異的に強い品種が見出されたが、ラット肝細胞アセトアミノフェン誘導ではいずれの品種も活性が認められなかった。以上の結果、有色素米の遺伝資源の利活用とその成育環境制御により、食品機能性に対して正確性・安定性を持つ食品素材が得られることが示唆された。
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