研究概要 |
本研究はダイズにおける花器脱落を個体の適応戦略としてとらえ、花器脱落の機作を作物学的に解明しようとする。個体の莢数が決定される過程すなわち花器の分化・発育から開花・脱落までの過程と収量性との関係を総合的に明らかにすることを目的とする。 具体的には、(1)花房の着生位置・次位からみた花芽の分化と発育、(2)花房の着生位置・次位からみた開花ならびに花器脱落の推移、(3)光合成・物質生産と開花・花器脱落の関係、について検討を加える。 本年度は特に伸育性の異なるダイズ品種の開花結実特性に検討を加えた。有限伸育型品種(タチスズナリ)と無限伸育型品種(東山69号)を用い,その開花習性と収量および収量構成要素を花房次位の観点から比較検討した. 低次位花房から高次位花房へと移行する開花の推移は両品種で同じ傾向であったが,主茎における開花速度はタチスズナリで速く、東山69号で遅かった。また.タチスズナリでは1次花房の開花終了後に高次位の開花が開始したが、東山69号では1次花房が開花を継続し花数を増加させながら、その途中で高次位花房の開花が開始した。 花器脱落についてはタチスズナリでは高次位になるほど脱落数が多くなったが、東山69号では1次と2次で最多となった。結莢率はすべての花房次位でタチスズナリが高くなった。百粒重についてはタチスズナリでは花房次位間で差異がなく、2次椏枝花房でやや大きい値となった。しかし東山69号では高次位花房で減少した。椏枝花房はタチスズナリで重要な役割を果たしており、個体植物単位数・総花器数・結莢率・個体当たり莢数・百粒重の決定にかなり貢献した。一方、東山69号の収量への寄与は1次・2次花房に限定された。
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