栽培しているイチゴ株(品種、雷峰)に8月上旬から4週間の夜冷短日処理をして、開花促進を図った。処理後に開花した第1次花房を調査対象とした。 花粉の生死判定と花粉の人工発芽を時期別に調べたが、開花初期の花と1ヶ月および2ヶ月後に開花した花の間には差が認められなかった。したがって夏季に分化させた花においては、花粉の稔性低下が起きているとは考えられなかった。 商品価値の低い果実の発生割合は、収穫初期は85%であり後期は75%であった。商品価値の低い果実の中では奇形果の占める割合が極めて大きかった。しかし奇形の程度は比較的軽いものが多かった。そう果、いわゆる種子の形状から不受精と発育不良種子に分けて、奇形果発生との関係を調べた。発育不良種子に起因すると見られる奇形および不受精種子と混在して発生する奇形が多く、不受精種子が奇形発生の主因と見られるもののおよそ2倍の発生であった。 種子の発育不全に関係するひとつの要因として、高温下での光合成能の低下による同化産物の供給不足を推定し、この観点から光合成収率測定をクロロフィル蛍光収率から判断した。8〜9月に展開したと考えられる葉の光合成能は10月中旬まで機能低下したままであったが、その後9月に展開した葉では回復したが、8月に展開した葉では回復しなかった。夏季高温下では光合成能の低下が起こっていると推定された。
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