研究概要 |
わが国におけるイチゴ果実の需要は周年だが、需要を満たすに十分な供給がされてはいない。特に7〜10月の夏秋期の生産は少ない。夏秋期が高温であるので、開花の連続性と果実肥大の確保を図る必要がある。品種'雷峰'を用いて、開花の連続性の確立を図り、結実不良要因を検討した。夏期の高温下で開花を継続させたときに起こる不良花・果の分類を行い、その発生要因を栄養上のトラブルとして検討を加えた。 1、促成作から継続して養液栽培した'雷峰'を7月から8月に掛けて、4および6週間の夜冷短日処理を行うと、花芽が形成されて、開花が再開する。 2、開花が継続している2年株を用いて、夏秋期に花芽分化が継続しなくなる温度条件を4段階に制御した自然光型環境調節ガラス室(ファイトトロン)へ搬入して検討した。花房の分化が継続しない温度は32/25,27/22℃であった。 3、夜冷短日処理を行って開花を9月から再開させたとき、花粉の稔性を調べると、9月と12月に採取した花粉の間には有意な差は認められなかった。 4、奇形果のそう果(種子)は、不稔、発育不全、充実種子に分けられ、発育不全は胚発育の座止と推定した。充実種子の断面積は1mm2以上で、不稔種子は0.4mm2以下であった。夏秋期の奇形果は発育不全種子が高い割合であった。 5、ファイトトロンで栽培したイチゴのクロロフィル蛍光を測定した。37/25℃ではFv/FmとΦPSIIが低下し、光合成活性の低下が推定された。 6、高温条件32/27℃で炭酸ガス施用による奇形果発生の低減を試みた。奇形程度が少となったが、基本的には光合成以外の別な要因が大きいと考察された。
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