研究概要 |
二次草原の維持は、人的、金銭的に困難な状況にある。霧ケ峰・美ケ原では1,000ha以上の二次草原があり、鎌倉時代から採草、放牧がなされていたが、現在では一部を除き行われていない。そのすべてを維持することは困難な状況にある。今後二次草原の持つ価値を評価し、効率的に管理・保全することが求められている。そこで、本研究では、1,000ha以上ものまとまった二次草原の残っている八ケ岳中信高原国定公園霧ケ峰地区と美ケ原地区を対象に、二次草原のにおける生物多様性の維持と景観保全に考慮した植生景観管理方法を明らかにすることを目的に研究している。 既往文献調査から二次草原の特質を論じた後,景観調査として現地利用者アンケートを写真投影法とSD法を用いて実施した。さらに,自然観察路周辺の植生調査も行った。写真投影法では、二次草原の主要構成要素である草花などの近景要素、遠景の山並みなどの眺望景観要素が多く撮影された。SD法による景観評価では、写真投影法で抽出された興味対象の景観イメージを明らかにした。植生調査では、歩道周辺における花群落の分布に影響を与える条件として標高と地形が重要であることが明らかになった。次に、生物多様性の観点で注目されている二次草原の管理方法を検討するため、霧ケ峰において過去30年の草原の樹林化を把握した。調査は、現地植生調査結果と風景写真を参考にして白黒空中写真を判読し、GISを用いて解析を行なった。その結果、既存樹林からの距離が遷移の速度を決定していることが明らかになった。また、小規模な樹林が新たに形成されており今後草原の消失は加速度的に進むことが予想された。二次草原を保全するには、小規模に点在する樹林を除去することが、有効な手法であると考えられる。
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