'Asami Red'では、秋から冬にかけて吸水量以上に蒸散量が増加したため、水分バランスが悪化し、花持ちが短くなった。蒸散量の増加は収穫後の相対湿度の低下によるものであり、小葉の水分損失量の増加と関係していた。一方、'Tineke'では、秋から冬にかけて吸水量と蒸散量は増加したが、花持ちは'Asami Red'ほど低下せず、全ての時期において吸水は蒸散を上回った。また、小葉の水分損失量は年間を通して一定で、秋から冬にかけての蒸散の増加は収獲後の湿度の低下よりも葉面積の増加に起因した。RNA-Ag+tris処理によって、両品種の花持ちは全ての収穫時期において増加した。'Asami Red'では、特に秋から春にかけて花持ち延長の効果が高く、ベントネックの発生が顕著に抑制された。同時期の花持ちに対するRNA-Ag+tris処理の効果は'Tinke'よりも'Asami Red'で高かった。 'Asami Red'のBrittle leafは栽培中の相対湿度が高くなる11月から発生し始め、その発生率は葉の成長の初期段階における湿度が高いことと関係した。Brittle leafが発生する切り花の蒸散量は高く、早期に水分バランスがくずれ、花持ちが著しく短くなった。Brittle leafは第3節以下の下位節の葉において発生することが明らかになり、第3節以下の葉を除去すると花持ちは長くなった。RNA-Ag+tris処理はBrittle leafからの過度な水分損失を抑制した。Brittle leafを発生する切り花においても、蒸散量を抑制し、生体重と水分バランスを一定に保ち、花持ち延長した。冬期における切り花の花持ちおよび水分特性には品種間差異が見られた。
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