前年度に引き続き、シコクカッコソウを中心に花色調査と花色素分析を行った。新たに開花した交配実生のほか、野生個体についても調査した。その結果、野生個体においても幅広い花色変異が観察され、産地によって特徴が見られた。また、近縁種についても調査した結果、サクラソウは多彩な品種があるにもかかわらず、濃淡の花色変異が中心で、コイワザクラ、イワザクラでは花色変異が乏しかった。また、カッコソウ類の青紫色系、サクラソウや野生個体、コイワザクラ、イワザクラでは、ほぼ同様の花色であった。色素分析を行った結果、カッコソウ類の紫桃色系ではコピグメンテーションによる花色変異であることが再確認され、近縁種も基本的には同じ花色変異メカニズムを基礎とすることが明らかになった。また、コルツソイデス種とシコクカッコソウとのF1が開花し、2個体ではシコクカッコソウの花色が導入されていることが確認できた。 また、新たにフローサイトメーターによる倍数性の調査を行ったところ、二倍体同士の交配でも四倍体が1個体得られ、三倍体を用いた交配では三倍体が多く得られたが、その多くは染色体数が少ない異数体と判断された。また、コルヒチン処理個体では四倍体が確認された。これらの一部について染色体観察を行った結果、先述の結果とほぼ一致した。 栽培試験については、2003年は盛夏の気温が低く、栽培・給水方法間の差が小さかったが、ハンモック栽培や不織布製ポットの利用により根量と不定芽数が大幅に増加することが確認され、増殖方法としての利用の可能性が示唆された。また、給水量の調節が重要と考えられ、生育期には十分な吸水量を確保し、秋以降には乾燥気味に管理することが望ましいと考えられた。
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