研究概要 |
ジャノヒゲやヤブランなど,わが国自生のユリ科グラウンドカバー3属8種とそれらの園芸品種は,都市緑化やガーデニングの材料として国内はもとより,欧米でも広く利用されている。本研究ではこれらの種および園芸品種の遺伝資源としての評価を行い,今後の活用に供することを目的とした。 1.植物材料の収集および主要種・品種群の類縁関係の整理 日本国内および英国でのナーセリーおよびナショナルコレクションを調査して収集した61種・品種を調査対象として,形態,生態および核内DNA量,葉緑体内DNA量の測定を行った。その結果,現在,流通している複数の品種が同一起源である可能性が示された。また,イギリス国内のユリ科グラウンドカバーのナショナルコレクションに品種誤認の存在を見いだした。さらに,属名不明で流通しているいくつかの植物に正確な属名を与え,分類体系の見直しを行った。 2.主要種であるノシランの繁殖効率の解明 ノシランの種子の発芽と貯蔵および実生の初期生育への施肥の効果を検討し,2月に採取した種子を用いて12月に出荷可能な苗に育成できるという,貯蔵種子の利用による早期苗生産の可能性を明らかにし,園芸学研究誌に論文を掲載した。 3.利用実態の調査と今後の利活用の指針 わが国で調査,記録したユリ科グラウンドカバーの利用事例をとりまとめ,今後の用途拡大への可能性を考察した。わが国の伝統的な和風庭園での利用を初め,洋風の建築物やガレージ空間,道路空間での利用や,近年流行の屋上緑化での利用事例を見いだした。また,強健で取扱が容易なタマリュウやヤブラン,さらには日陰の材料として徴用されるキチジョウソウの他にも,少数ながら多様な種と品種が利用されていることが見いだされた。 本研究の結果は,これら3種のグラウンドカバー用植物が都市緑化とガーデニングの貴重な遺伝資源として今後普及するための基礎資料を提供するものといえる。
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