早期の着果制限がモモの果実発育と核割れの発生に及ぼす影響を調べた。'紅清水'と'清水白桃'の2品種に摘蕾あるいは摘花の処理を行うと、幼果期には両品種とも無処理の対照区に比べ、両処理区で果実重が大きく、子房壁の細胞数も多かった。果実発育第1期末にいずれの区にも一律に強い摘果を行ったところ、'清水白桃'の収穫時の果実重と核割れ率は、対照区では205gと26.1%であったが、摘蕾区と摘花区では296gと263g、57.8%と41.7%に大きく増加した。対照区と摘蕾区の葉に^<13>CO_2を施与して光合成産物の転流を調査すると、果肉の^<13>C濃度は両区とも増加したが、摘蕾区の方が対照区に比べ高かった。第2期はじめに果梗から水を注入して核の耐圧力を調査すると、大きい果実ほど耐圧力は低かった。第1期末に別樹に設けた対照区と摘果区で果汁の浸透圧の日変化を測定すると、両区とも日中は浸透圧が上昇し、夕方から早朝に掛けては低下するというサーカディアンリズムを描いたが、摘果区の方がその振幅が大きかった。これらの果汁の主要な既知の遊離糖はグルコースとフルクトースであったが、摘果区は総糖濃度、とくにスクロースと転流糖であるソルビトールの濃度が高かった。なお、果実や種子組織によって糖組成は大きく異なり、未同定の遊離糖が多数検出された。 以上の結果より、摘蕾や摘花は幼果の細胞分裂を促し、大果生産への可能性を示した。一方、第1期末の強摘果は果肉の浸透圧を高め、果実肥大を促したが、核割れも誘発した。したがって、第1期末から第2期末にかけての強摘果は控えるべきである。今後は、早期の着果制限及び硬核期以外の時期の摘果や摘心による肥大促進が、商品性のあるモモ生産にどの程度有効であるかを検証する予定である。
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