研究概要 |
わが国では消費者も流通業者も大果を好むため生産者は果実肥大に努める.しかし,モモでは過度に肥大を促すと核割れを誘発し,落果や品質低下を招く.そこで,摘果よりも早期の処理である摘蕾が果実発育や核割れに及ぼす影響を調査し,核割れの発生要因を検討した. 摘蕾区は無摘蕾の対照区(いずれの区にも慣行の肥培管理をした)よりも果実重や糖度が有意に増加したが,核割れ率はわずかに上昇したにすぎなかった.果肉と核の硬度は第1期末にはほぼ同程度の値であったが,果肉硬度はその後低下したのに対し,核硬度は第2期末まで上昇した.しかし,両者とも区間差はみられなかった.摘果処理区を設け,プレッシャーチャンバーを用いで果梗から加圧注水し,核が割れるまでに加えられた圧力を測定すると,第2期中〜後期の耐圧力は摘果区の方が対照区より有意に小さかった.第2期末の樹上で変位計とひずみ計を用い果径や果皮の変化をみると,晴天日の果実は日中,一時的に収縮し,夕方から急速に肥大するという概日変化を繰り返し,水ポテンシャルが高い夜半に核割れや裂果発生のシグナルが検出された.果汁の浸透圧にも日変化が認められ,摘果すると残した果実の浸透圧が上昇した.なお,核割れの発生時点を把握するための変位計とひずみ計,および核割れの有無を外部評価するための核磁気共鳴装置の利用は有効な手段であると思われた.さらに,摘果処理によって胚発育の異常率が高くなる傾向がプロイディ検査で認められた.これら調査結果に関してはなお一層の精査が必要である.以上のように,第2期の摘果は残した果実の浸透圧を高め,果実肥大を促すが,同時に縫合面の接合強度を弱め,核割れを起こし易くする.したがって,よりマイルドな果実肥大促進技術である摘蕾を重視した栽培が望ましい.
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