研究概要 |
クロマメノキと栽培種のブルーベリーとの正逆交雑を行った結果,クロマメノキを花粉親に用いた場合には全く種子は得られなかったが,同種を種子親に用いた場合,品種間に違いはあるもののハイブッシュブルーベリー,ラビットアイブルーベリーとの交雑でいずれも種子が得られた.得られた個体の一部(クロマメノキ'ブルークロップ'から得られたKB3系統)と両親について雑種性を解析したところ,フローサイトメーターではKB3系統とも両親のほぼ中間の相対蛍光強度を示し,RAPD法による解析では,KB7,9は両親のバンドを有していたことから,いずれもクロマメノキと'ブルークロップ'の雑種であることが明らかとなった.また,KB3系統の葉の形,花の大きさ・形などはいずれも両親の中間的な値を示した.KB7の果実は,クロマメノキに近い球形で,果柄が長く,果粉が少なかった.花粉を詳細に観察した結果,ブルーベリーの花粉は通常4分子の集合花粉であるのに対し,KB3系統の花粉には1〜3分子などの異常花粉が多数観察された.また,走査型電子顕微鏡を用いて微細構造を観察した結果,KB3系統の花粉は大きさ・形に統一性がなく,つぶれた花粉が多数観察された.寒天培地上での発芽率はKB3系統共に4〜10%程度と低く,前述した1および2分子からも花粉管が発芽するものも観察されたが,多数の異常花粉により発芽率が低いものと推察された. これらの結果から,KB7,KB9およびKB10はクロマメノキと'ブルークロップ'との雑種であり,花粉にも発芽力があることが明らかとなり,これらの雑種が我が国の野生種を利用した品種育成にとって重要な育種素材となる可能性が示唆された.
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