1.増殖率の高い再分化系作出のための培養条件の検討を行った。材料は、ニホンナシ'おさ二十世紀'の茎頂、茎、葉身および葉柄を用いた。無機塩類、植物成長調節物質、培地添加剤、ゲル化剤等の種類および濃度について検討した。茎頂からは、茎葉の展開がみられたが、その他の材料からは、カルスの形成がみられたか、あるいは枯死した。また、茎頂由来のカルスを材料として、カリクロン植物作出のための培養条件の検討を行った。カルスの生長は、WP培地の無機塩類で旺盛となった。植物成長調節物質および添加剤については種々検討したが、いずれもカルスから不定芽や不定胚の形成はみられず、再分化個体を得られなかった。 外植体として、'おさ二十世紀'のほかに'長十郎'および'幸水'の茎頂を用いて培養を行った。その結果、'長十郎'では、WP培地に、オーキシン、ジベレリンおよびサイトカイニンを組合せることにより、不定芽が旺盛に発生することが明らかとなった。 2.抵抗性株の選抜の準備として、'おさ二十世紀'より採取したナシ黒斑病菌を単胞子分離し、胞子形成能および毒素生成能の高い菌株をスクリーニングし、胞子を増殖させた。また、ニホンナシにも毒性を示すことが知られているイチゴ黒斑病菌についても胞子形成能等を確認後、胞子を増殖させた。これらを超低温フリーザー中で凍結保存した。 これまでの研究によってニホンナシ'おさ二十世紀'における組織培養について多くの新知見を得ることができた。その一方で、十分な大量増殖の培養条件を見出すことができなかったことから、所期の目的であるナシ黒斑病耐性個体を選抜するまでには至らなかった。しかし、ニホンナシ'長十郎'において多芽体形成の培養条件を確立することができた。このことから、'おさ二十世紀'においても同様の方法で多芽体を形成させ、ナシ黒斑病耐性個体を選抜する可能性が示されたものと考えられる。
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