ウリ科食性甲虫の寄主特異性はウリ科に特異的に含まれるククルビタシン摂食刺激によって説明されている。本研究ではウリ科食性甲虫、すなわちトホシテントウ、ウリハムシ、クロウリハムシ、ヒメクロウリハムシの寄主選択に関わる摂食刺激因子を調べた。上記の前3者はウリ科に特異的に含まれるククルビタシンに摂食を刺激されるが、後者は刺激されない。そこで後者のクロウリハムシが選好するヘチマから摂食刺激物質を単離した。構造決定に至らなかったが、ステロイド化合物と判明した。この物質は他の3者に刺激活性はなかった。ヒメクロウリハムシはヘチマ摂食の際、この物質を鍵物質の一つとしていると考えられた。ウリ科植物のひとつ、キカラスウリはククルビタシンを含まない。しかし、トホシテントウ、ウリハムシ及びクロウリハムシはこの植物を寄主としている。キカラスウリに含有される摂食刺激物質を調査したところ、刺激物質はスピナステロールの一種24-dietyl5 α-cholests-7.22E.-dien 3 β-ol、Luteolin-7-o-gulucosideと判明した。これらの物質に対する3種のハムシの摂食反応は、それぞれ違っており、キカラスウリ摂食に際して異なる物質を鍵物質としていることが明らかになった。また同じくククルビタシンを含まないアマチャヅルを選好するアトボシハムシの摂食刺激物質を調べたところ、トリテルペン配糖体と判明した。寄主特異性=寄主植物中の特異物質の範疇に入らない食植性昆虫は多いと思われる。これらの食植性昆虫が寄主特異性物質を欠く場合、どのような物質を利用して寄主を決めているかの一端が明らかになったと思われる。
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