有用微生物を用いた植物の全身獲得抵抗性の誘導による環境保全型作物保護技術の確立

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13660044
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 百町 満朗 岐阜大学, 農学部, 教授 (90113612)
• 研究分担者: 須賀 晴久 岐阜大学, 遺伝子実験施設, 助手 (20283319)
• キーワード: 有用微生物 / 抵抗性誘導 / 環境保全

研究概要

我々は、これまでに植物生育促進菌類(PGPF)の各種菌株の培養ろ液がキュウリの各種病害に対して全身的抵抗性を誘導すること、さらにキュウリ体内における細胞壁の強化が病害抑制に関与していることを報告してきた。一方、これまでに植物生育促進根圏細菌(PGPR)によって誘導される病害抵抗性には病原性関連(PR)遺伝子は関与していないとされている(Pieterse et al.,2001)ため、PGPF処理によってもPGPRと同様にPR遺伝子が植物で認められるか否かを明らかにすべく、各種菌株の培養ろ液を根に処理したキュウリ幼苗の胚軸部において、PR遺伝子として知られるペルオキシダーゼ遣伝子の発現をノーザンブロットハイブリダイゼーションで調べた。その結果、滅菌水を処理したキュウリ胚軸部ではいずれの遺伝子の発現も認められなかったのに対し、各種PGPFの培養ろ液を処理したキュウリ胚軸部では、両遺伝子ともに処理後2時間後から認められ、それらの発現量は処理後24時間まで徐々に増加した。このことから、各種PGPFの培養ろ液をキュウリの根に処理することで、キュウリ幼苗に全身的なプライミング効果が生じることが分からた。また、これらの遺伝子は病原菌や化孝物質によって誘導されるPR遺伝子と非常に高い相同性を示すことから、PGPFによって誘導される病害抵抗性は、PGPRとは異なるシグナル伝達経路を持つことが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Suga, H., Ikeda, S., taga, M., Kageyama, K., Hyakumachi, M.: "Electrophoretic karyotyping and gene mapping of seven formae speciales in Fusarium solani"Current Genetics. 41. 254-260 (2002)
• [文献書誌] Priyatmojo, A., Yamauchi, R., Naito, S., Kageyama, K., Hyakumachi, M: "Comparison of whole-cell fatty acid composition of isolates of Rhizoctonia solani AG 2 from tobacco and tulip, AG 2-1 and AG-B"Journal of Phytopathology. 150. 283-288 (2002)
• [文献書誌] Kageyama, L., Kobayashi, M., Tomita, M., Kubota, N., Suga, H., Hyakumachi, M: "Production and evaluation of monoclonal antibodies for the detection of Pythium sulcatum in soil"Journal of Phytopathology. 150. 97-104 (2002)
• [文献書誌] Priyatmojo, A., Yamauchi, R., Carling, D.E., Kageyama, K., Hyakumachi, M: "Differentiation of three varieties of Rhizoctonia circinata ; var. circinata, var. oryzae and var. zeae on the basis of cellular fatty acid composition"Journal of Phytopathology. 150. 1-5 (2002)
• [文献書誌] M.Hyakumachi, M.Kubota: "Fungi as Plant Growth Promoter and Disease Suppressor in Handbook of Fungal Biotechnology, Second Edition"Marcel dekker, inc.. (2003)