研究概要 |
Brome mosaic virus(BMV)は、最も研究の進んだモデル植物ウイルスのひとつであるが、シロイヌナズナ等のモデル植物を宿主としない。最近我々は、BMVと同じブロモウイルス属に属し近縁なSpring beauty latent virus(SBLV)が、シロイヌナズナに効率よく全身感染することを発見した。13年度の研究では、ウイルス-植物間相互作用に関わるウイルス因子を解析するために全長cDNAを介したSBLVの遺伝子操作系を構築し、さらにゲノムRNAの構造を決定した。また、宿主植物因子のクローニングのためにシロイヌナズナのモデルaccessionをCol-0に決定した。14年度は、(1)EMSにより突然変異誘起処理したCol-0の種子由来のM2植物2,231個体にSBLVを接種し調査した結果、SBLV感染が遅延する変異株が1ライン選抜された。このラインにおけるSBLV感染の遅延は、細胞間移行のレベルで決定されていた。また、遺伝学的解析の結果、この遅延は劣性の形質によって支配されていた。(2)67種類のアクセッションにおけるSBLVの感染性を調査した結果、Pla-0ではSBLV感染が遅延した。この遅延は細胞間移行のレベルで決定されていた。また、遺伝学的解析の結果、この遅延は劣性あるいは不完全優性の形質によって支配されていた。(3)85種類のアクセッションにおけるSBLVの病徴を観察した結果、S96など4つのアクセッションが病徴を発現した。遺伝学的解析の結果、S96における病徴発現に関与する不完全優性の核内単一遺伝子座SSB1が同定された。さらにマッピング解析の結果、SSB1は第4染色体上に位置していた。S96におけるSBLVの感染性を調査した結果、SSB1はSBLVの複製や細胞間移行、長距離移行といった感染過程には関与せず、病徴発現に関わっていた。
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