平成14年度については、トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)における染色体相互転座の解析を中心に下記の成果を得た。 1.宿主特異的毒素であるT-toxin生合成遺伝子PKS1(polyketide synthasegene)とDEK1(decar-boxylase gene)をプローブに用いて前中期〜中期染色体に対する2色FISHを行い、それぞれの遺伝子が異なる染色体上に座乗することを細胞学的に証明した。両遺伝子は、それぞれ染色体先端部のDAPI濃染部に存在していた。 2.相互転座染色体12;6の転座点近傍に位置するDFK1とRFLPマーカーB88、及び6;12の転座点近傍に位置するPKS1とRFLPマーカーB149p4の物理的距離をファイバーFISHを用いて解析した。B88とB149p4のシグナルサイズ/塩基配列数を基準値とすることにより、DEK1-B88とPKS1-B149p4の物理的距離をそれぞれ25-46、65-91kbと推定した。この距離と遺伝地図から推定した距離を比較することにより、減数分裂時に転座点付近で交叉の抑制は起きていないこと、及び従来予測されていた大きい断片の転座点近傍への挿入の可能性は低いことが明らかとなった。 3.トウモロコシごま葉枯病菌で確立した転座解析技術が他の糸状菌にも適用できることをモデル生物であるアカパンカビ(Neurospora crassa)の相互転座系統を用いて実証した。
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