植物は病原体に感染すると種々の防御反応を行う。そのうちの代表的なものの一つにPR(Pathogenesis Related)遺伝子群の発現誘発がある。一方、根頭癌腫病の原因病原体であるアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens AKE10株)は植物腫瘍誘発遺伝子の一つとして6b (AK-6b)を持つ。本研究ではAK-6b遺伝子を導入したタバコでのPR1の発現の動態を調べることを目的とする。これまでカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモターに制御されたAK-6bを発現するいくつかのトランスジェニックタバコにオーキシン、サイトカニンを投与したところ、PR1 mRNA量とAK-6b mRNAの蓄積には逆の相関があることがわかった。従って、AK-6b遺伝子の発現によりPR1mRNAの蓄積が抑制されていることがわかる。さて、フェノール化合物の一種であるサリチル酸はPR1遺伝子発現を誘発することが知られている。一方我々はAK-6b-トランスジェニックタバコに植物ホルモンを投与すると内生フェノール化合物の動態が野生型タバコに比べ大きく変化することを見い出した(我彦ら、2001)。そこで、AK-6b-タバコでPR1mRNAの蓄積が減少しているの内生サリチル酸の量が減少している可能性がある。しかしサリチル酸のレベルはいずれも正常であった。したがって、AK-6b遺伝子によるPR1遺伝子の発現抑制には未知の機構が働いているかの性が示唆される。
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