研究概要 |
1.Pathogenesis related(PR)遺伝子は病原体が植物に感染したとき,植物防御のひとつとして発現される遺伝子である。一方,土壌細菌アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)は植物に感染して根頭癌腫病を誘発する。その腫瘍遺伝子のひとつに6bがある。私たちは日本産アグロバクテリウムの6b遺伝子がPRI遺伝子発現に及ぼす影響を調べている。6bをさまざまなレベルで発現するトランスジェニックタバコを作出した。この組織を植物ホルモンを含む茎葉分化培地(ベンジルアデニン1μg/ml,ナフタレン酢酸0.1μg/ml)で3週間育成した後mRNAを抽出し、PRIaをプローブとしてノザンハイブリダイゼーションを行った。約10種類の組織について調べたところ、6bの発現量の多いものはではPRIaの発現が見られず、6bの発現量の少ない物ではPRIaの発現量は多い物から少ない物まで分布していた。また対照では発現が見られなかった。6bの発現量と培地に加えた植物ホルモンの組み合わせによって組織は形態が異なる。したがって,6bによるPRI発現の抑制というのは、6b遺伝子発現そのものよりも6bの発現とホルモンとの相互作用によって生じた形態変化の結果であろうと言うことが示唆された. 2.Histidineタグを付加した6b遺伝子を大腸菌で大量発現し、6b蛋白の部分精製を行った。 3.PRIaの発現を誘発する物質としてサリチル酸が知られている。内生サリチル酸レベルを測定したところ、PRIaの発現が見られない組織ではむしろ少し高かった。内生サリチル酸レベルが低いためにPRI発現レベルが抑えられているのではないらしい。
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