1.発病抑止型土壌で栽培したトマト植物体では、発病型土壌で栽培したトマトと比較して、トマト根面、根内、ならびに地上部での青枯病原細菌の増殖が抑えられていることが明らかになった。 2.トマト根面から好気性細菌を培養・単離し、得られた菌体からDNAを抽出し、1.6S rRNA遺伝子をPCR法により増幅後、2種類のRFLPパターンを解析し、細菌群集構造を調べた。その結果、発病抑止型土壌の根面細菌群集は多様な種類の細菌から成る集団であることが明らかになった。 3.発病抑止型土壌および発病型土壌で生育させたトマト根面の微生物画分およびこれらの画分からの分離株について、発病抑止型土壌の微生物に特徴的な性質を検索するため、ペクチン培地における増殖速度ならびにペクチン分解酵素の1つであるポリガラクトウロナーゼ活性を調べた。またこの実験に先立ち、ペクチンがトマト根からの主要分泌多糖類であることを液体クロマトグラフィを用いて確認した。実験の結果、根面微生物画分のペクチン培地における増殖速度およびポリガラクトウロナーゼ活性は、pH4.0および6.0のいずれの場合にも、発病抑制型土壌で生育させたトマト根面の微生物画分の方が高い値を示した。このことより、発病抑制型土壌で生育したトマトの根面は、主要な根分泌物であるペクチンをめぐる競争という点において、青枯病原細菌にとって厳しい環境であると推察された。 4.発病抑止能における土壌微生物性の寄与について検討するため、クロロホルム燻蒸消毒した発病抑止型土壌に発病抑止土壌および発病型土壌(いずれも生土)を微生物源として少量混合して発病試験を行った結果、発病抑止土壌を混合した場合に発病が抑止された。この結果から、発病抑止土壌の発病抑止能には、土壌の微生物性が関与しているものと考えられた。
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