本年度は、これまでの2年間の成果を元に、チャの培養細胞を用いてAl処理と脂質過酸化および抗酸化系の関係について検討した。その結果、培養細胞の膜脂質過酸化量はAlによってわずかに低下するのみであったが、活性酸素の一種である過酸化水素含量はAl添加によって顕著に低下した。500μMのAl添加によって無添加の50%程度にまで低下した。このAlによる過酸化水素含量の低下はAl処理後30分以内に起こっていることがわかった。 また、抗酸化系に含まれるいくつかの酵素(カタラーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、およびスーパーオキシドジスムターゼ)の活性は、Al添加によって増加する傾向を示した。Alの他、チャの抗酸化系に影響を与えることが知られているNaClとサリチル酸の影響を調べたが、過酸化水素含量や酵素活性に対する影響は、Alの場合とは異なっていた。また、Alによって過酸化水素含量が低下した要因を明らかにするため、カタラーゼ活性の阻害剤である3-アミノトリアゾール(3-AT)を添加してAlの影響を検討した。カタラーゼの活性は顕著に低下したが、過酸化水素含量には影響がみられなかった。したがって、過酸化水素のAlによる減少はカタラーゼのみではなく、他の要因によって起こっていると考えられた。 以上、チャにおけるAlの機能またはAlによる促進効果の要因をあきらかにするため、今年度は、チャ培養細胞を用いて、Alと過酸化水素含量および抗酸化系の関係を調べた。得られた結果から、Alによって脂質過酸化によるダメージが減少し、生育促進に反映していることが示唆された。また、詳細は不明であるが、Alによって抗酸化系の酵素活性が増加することも明らかとなった。さらに、前年度までに得られている結果も考え合わせると、細胞壁フェノール類やシュウ酸が生育促進効果に寄与している可能性もある。
|