アーバスキュラー菌根菌は、植物根の内部に共生する土壌糸状菌の一種である。菌根菌は土壌中に伸張した菌糸からリン酸を吸収し、樹枝状体で植物に供給する。一方、樹枝状体は植物から光合成産物を受け取る。すなわち樹枝状体は菌根菌と植物との養分交換の場である。しかし、樹枝状体で行われている代謝反応やその制御に関する知見は少ない。これまでに本研究室で、マメ科のモデル植物ミヤコグサ(Lotus japonicus)のアーバスキュラー菌根菌樹枝状体超着生変異体Ljsym78-2において、野生株と比較して形態的に著しく発達した樹枝状体が多数形成されることが見出され、この樹枝状体を根から迅速で簡便に単離できる方法が確立された。これらを利用して、Glomus intraradicesを感染させた根から樹枝状体画分を単離し、RNAを抽出して樹枝状体ESTライブラリーを構築することを試みた。 Ljsym78-2を、G.intraradicesの胞子を添加した培土を用いグロースチャンバーで90日間栽培した。サンプリングした根を直ちに組織保存用試薬(RNA later)に浸漬し、昨年度開発された根からの樹枝状体の単離操作を行い、高頻度で樹枝状体を含む画分を得た。樹枝状体画分からRNAの抽出操作を行い、RNAが抽出できたかどうかをRT-PCRによって確認した。このためのプライマーとして、G.intraradicesの外生菌糸EST(40SリボゾーマルプロテインL19)から設計したプライマーとG.intraradicesの18SrRNAに特異的なプライマーが有効であることをあらかじめ確認しておいた。樹枝状体から抽出したRNAを用いてESTライブラリーの作製を行った。約10^6pfuのファージからなるライブラリーの作製に成功した。インサートサイズは平均約1kbと良好であった。
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