研究概要 |
新規セレン定量法の開発と応用に関して、以下の結果を得た。 1.セレン定量法と定量用化合物の合成 蛍光性ピアセレノールの設計と合成:蛍光性を持つことが期待されるo-フェニレンジアミン、ジアミノフェナジエン、1,2-ジアミノアントラキノンを合成した。さらに、4価のセレンと反応させ、ピアセレノールを合成した。しかし、いずれの化合物も種々の溶媒への溶解度が低く、化合物の親水性を上げることによって、定量に用いることが可能になることがわかった。一方、クマリン系化合物の合成は、種々の合成方法を試みたが現在のところを最終生成物は得られておらず、セレンの定量を行なうには至らなかった。 ピアセレノールのGC-MSによる定量は、GC-ECDによる定量に劣っていた。1,2-ジアミノアントラキノンに関しては、蛍光性があることを確認し、また、濃度と蛍光強度に良好な直線性が得られた。 2.セレン耐性植物の作出 セレン耐性植物の選抜:EMSによる変異株とタギングによる変異株ならびにスクリーニング条件を用いて、セレン酸および亜セレン酸耐性株の選抜を行なった。その結果、3つの耐性株が得られた。うち1株からは、種子が取れたが、他の2株からは種子を取ることができなかった。また、この1株は、sel1とは別の遺伝子座に変異があることを確認した。現在、本変異株について、遺伝学的解析を行なっている。 シロイヌナズナへのセレンの移行:発芽直後のシロイヌナズナへのセレンの移行を測るために、水耕栽培でシロイヌナズナを育て、シロイヌナズナ中のセレン濃度の測定を行なった。その結果、シロイヌナズナ中のセレン濃度が低かった。このことは、本変異株が、セレンを取り込まない、または、すばやくジメチルセレナイドとして排出して耐性を持っていることを示唆している。
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