研究概要 |
新規のAl耐性遺伝子を単離し耐性機構を解明するため、シロイヌナズナのアクティベーションタギングライン16,000株をスクリーニングし、約20株の耐性候補を得た。しかしサザンハイブリの結果から、ほとんどの株でタグの染色体への多コピー挿入が見られ、遺伝子解析が可能な耐性株は#355-2のみであった。TAIL-PCRの結果、この株では第1染色体のF9E10.5遺伝子の上流に1コピー挿入されていた。RT-PCRにより、下流の2つの遺伝子(F9E10.5とF9E10.6)が高発現化することも明らかとなった。なおF9E10.6は3-methyladenine glycosylase遺伝子であったが、F9E10.5は機能未知の遺伝子である。またF9E10.5は根で特異的に発現した。 #355-2株の根毛は野生型株(Col)のそれの約1/3であり、何れかの遺伝子の高発現化が起因する可能性があった。さらにこの株では野生型株に比べて根全体でのAl吸収量が低く、根毛からのAlの取込みが低いことでAl耐性となった可能性が示唆された。では、色々な根毛の変異株の中にはAl耐性を示すものがあるのではないだろうか?そこで根毛の変異株を用いてAl感受性試験を試みた。その結果、野生型株に比べて耐性を示すものがいくつか確認された。これらは根毛がAl毒性機構や耐性機構に関連することを示唆している。 さらにF9E10.5遺伝子の完全長cDNAを用いて高発現型と発現抑制型のプラスミドを構築し、アラビドプシスに導入して各々形質転換体を得た。しかし、これらの形質転換体の根毛長は非形質転換体のそれと、ほとんど違いがなかった。また、これらの形質転換株を用いたAl感受性試験でも、両タイプの株とも非形質転換体と同レベルの感受性であった。#355-2株のAl耐性や短い根毛の形成はF9E10.5遺伝子の高発現化だけでは説明できなかった。
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