根から有機酸の分泌はアルミニウム耐性機構の一つであり、本研究ではアルミニウム処理してから有機酸の分泌に至るまでの機構を解析した. 1.ソバにおいてアブシジン酸(ABA)がアルミニウムによるシュウ酸の分泌に関与していることを明らかにした。シュウ酸の分泌はABAの添加によって誘導されたが、他の植物ホルモンによって誘導されなかった。またABA合成阻害剤であるFloridonを添加すると、アルミニウムによるシュウ酸の分泌が減少された。さらに、根の先端のABA濃度はアルミニウム処理によって速やかに増加した。遮光や地上部の切除はシュウ酸の分泌量に影響を与えなかった。 2.アルミニウム耐性の異なるライ小麦二系統を用いて、有機酸の代謝に対するアルミニウムの影響を調べた.アルミニウムによって、根端の有機酸含量が増加したが、耐性系統と感受性系統との間に差が認められなかった.また四酵素活性に対するアルミニウムの影響はいずれの系統においてもなかった.^<31>P-NMRによる根端の細胞質と液胞のpHを測定した結果、アルミニウム処理による影響は見られなかった.これらのことはライ小麦において有機酸の代謝の改変がアルミニウムによる有機酸分泌への寄与が小さいことを示唆している. 1.スクリーニングで選抜したアルミニウム耐性の異なる21品種の大麦を用いて、オオムギにおけるアルミニウムの耐性機構を調べた.アルミニウムによってアルミニウム耐性品種の根からクエン酸が分泌され、クエン酸の分泌量とアルミニウム耐性との間に有意な正の相関が認められた。また分泌特性を調べた結果、クエン酸の分泌はアルミニウム処理後20分以内に起こり、低温やアニオンチャンネル阻害剤NIFによって阻害されることが明らかとなった.さらに、クエン酸の分泌量はアルミニウム処理濃度に依存しないことをつきとめた。これらの結果は大麦において今まで報告された分泌パターンと異なるパターンを有していることを示唆している.
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