研究概要 |
肥効調節型コーテイング肥料のポリオレフィン系被膜が,土壌に残留する問題が指摘されている。そこで,本研究では残留被膜の土壌中での変化,特に微生物による生分解過程の解明および被膜成分が土壌微生物群集に及ぼす影響解析を目的とし、被覆材の生分解に関与する長鎖n-アルカン資化細菌の様々な土壌での菌数や菌種の分布を調べた。 まず,被覆肥料LPコートの施用歴をもつ畑土壌や水田土壌について,最確値法により,各土壌中に生息する長鎖n-アルカン資化細菌の菌数を調べた。長鎖n-アルカン(n-triacontane ; C_<30>)を唯一の炭素源として用いた液体培地に土壌希釈液を接種し,マイクロタイタープレート中で2週間培養後,Iodonitro tetrazorium violet(INT)を添加し,その反応により資化菌数を計数した。その結果,供試した各土壌1g中に2.6×10^3〜2.7×10^1の長鎖n-アルカン資化細菌が存在することがわかった。 次に,長鎖n-アルカン資化細菌の種を特定するため,これらの土壌から長鎖n-アルカン資化細菌を分離し,16SrDNA解析による同定を行った。その結果,Nocardioides属,Pseudomonas属,Ralstonia属,Storeptomyces属などの多様な菌種が長鎖n-アルカン資化能を有していた。しかし,存在する細菌種は各土壌間で異なっており,土壌ごとに優占する長鎖n-アルカン資化細菌の菌種は異なることが示唆された。
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