研究概要 |
澱粉生合成における唯一のグルコース供与体はADP-グルコースであり,ADP-glucose pyrophosphorylase (AGPase)によって合成される.植物生体内において,AGPaseはアロステリックに調節され,澱粉生合成速度を支配していると考えられている.本研究では,AGPaseのアロステリック特性が澱粉合成量に与える影響を詳細に解析し,最終的な植物の生産性(収量)の増加をめざし,以下に示す成果を得た. (1)葉におけるAGPaseを欠損したシロイヌナズナ(TL46株)に,アロステリック感受性の低下したAGPaseをコードする遺伝子を導入した形質転換植物を作成・解析した. (2)形質転換植物の葉におけるAGPase活性は,TL46株の10倍以上に,また,野生株の1.5倍以上に増加した. (3)形質転換植物葉の澱粉蓄積量は,野生株の1.3倍程度であったが,その代謝回転率は1.8倍に増加した.また,葉の乾物重量ならびに面積も野生株に比べ1.8倍に増加した. (4)形質転換植物の種子の収量は,野生株の1.3倍に増大した. 以上の結果より,AGPaseのアロステリック特性は,澱粉合成速度を調節するだけでなく,植物の生育や収量にも影響し,アロステリック感受性の低下は澱粉合成量,代謝回転ならびに収量の増加をもたらすことが示された.
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