研究概要 |
本研究ではエネルギー代謝変異が大腸菌細胞におよぼす影響を,プロテオーム変動解析とDNAマクロアレイ法による遺伝子発現解析により検討し,大腸菌細胞システムの理解を深めるとともに,その情報を産業的に役立てることを目指している.平成13年度の具体的な研究実績は次の通りである.プロテオーム及びアレイ実験とも,基本的な解析条件が整ったので,今後本格的な解析に入る予定である. (1)プロテオーム変動解析 (1)大腸菌K-12野生株W1485と,この株から形質導入によって作出したF_1-ATPase欠損変異株をグルコース最少培地でケモスタット培養し,時間軸を排した生理学的に均一な細胞集団を得て,プロテオーム解析の試料とした. (2)両株の全発現タンパク質を2次元電気泳動によって分離するための泳動条件を種々検討し,細胞質画分,膜画分それぞれに適した条件を設定できた. (3)両株で差異の認められるタンパク質のスポットを解析ソフトウエアーおよび視認により選定した所,細胞質画分では約50個,膜画分では約20個のタンパク質スポットが確認された.現在これらを飛行時間型質量分析計とWeb上のゲノム情報を用いて同定している. (2)DNAマクロアレイ法による遺伝子発現解析 (1)ケモスタット培養した大腸菌細胞よりトータルRNAを抽出し,^<33>PラベルcDNAを合成した.これをDNAマクロアレイとハイブリダイゼーションさせた. (2)BASによるアレイ画像読み取りと,マイクロアレイ解析ソフトウエアーによる画像解析を行い,野生株と変異株の遺伝子発現の差を解析する条件を整えた. (3)これまでの所,中枢代謝経路ではTCAサイクルのいくつかの酵素遺伝子の発現が変異株で低下していることが示唆されているが,再現性を確認する必要がある.
|