研究概要 |
1.[目的] エネルギー代謝変異が大腸菌細胞におよぼす影響を,プロテオーム変動解析とDNAマクロアレイ法による遺伝子発現解析により検討した. 2.[方法] (1)サンプル調製:大腸菌K-12野生株W1485と,この株から形質導入によって作出したF1-ATPase欠損変異株をグルコース最少培地でケモスタット培養し,角術の試料とした. (2)プロテオーム解析:両株の全発現タンパク質を2次元電気泳動によって分離し,両株で差異の認められるタンパク質のスポットを飛行時間型質量分析計を用いて同定した. (3)DNAアレイ法による遺伝子発現解析:両株の細胞より全RNAを抽出し,33PラベルcDNAを合成した.これをDNAマクロアレイとハイブリダイゼーションさせ,アレイ画像読み取りと画像解析を行い,野生株と変異株の遺伝子発現の差を解析した. 3.[結果] 解糖系諸酵素ではプロテオーム解析と活性測定により変異株での発現上昇が認められたものがいくつかあったが(phosphoglycerate kinase, enolase, pyruvate kinase I, pyruvate dehydrogenase), DNAアレイでの発現上昇はpyruvate dehydrogenaseのみであった.TCAサイクルの多くの酵素では発現低下が認められ,上記3項目全てにおいて一致したのはcitrate synthase, succinyl-coA synthetase, malate dehydrogenase, isocitrate lyase, malate synthaseであった.一方succinate dehydrogenase, fumarate hydrataseでは活性とプロテオームにおいてのみ発現低下が確認された.呼吸鎖ではNADH dehydrogenase-2とcylochrome bdの活性上昇がDNAアレイにおいても確認された.
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