研究概要 |
麹菌Aspergrillus oryzae ESTデータベースに見出されたマルターゼ遺伝子(malT)を含むファージクローンの10-kbのDNA断片についてシークエンスした結果、マルトース・パーミアーゼ(malP)、マルターゼ(malT)、さらに転写因子に典型的なzinc binuclear motifを有するタンパク質をコートする遺伝子(malR)の3個の遺伝子がクラスターを形成していることが判明した。ノーザン解析により発現解析を行ったところ、malPおよびmalTはマルトース存在下で強い発現が認められ、グルコースやグリセロール存在下ではほとんど発現が見られなかったが、malRはいずれの炭素源でも弱いながらも同じ程度の発現が認められた,malPのcDNAをマルトースパーミアーゼ欠損酵母に導入したところ、MALPはマルトースの細胞内への取り込み活性を有することが分かった。malPおよびmalRの遺伝子破壊株を作成して表現型を調べた結果、malPは麹菌のメジャーなマルトーストランスポーター遺伝子であり、malTはmalPおよびmalTのマルトースによる誘導発現に必要とされる転写因子遺伝子であることが示唆された。一方、麹菌全ゲノム解析の結果、このMALクラスターに非常に相同性の高いクラスター構造をもつDNA配列が見出された。しかし、このクラスター内の遺伝子の発現をノーザン解析によって調べたが、マルトースを炭素源とした場合にもほとんど発現が認められなかった。また、遺伝子ライブラリーからスクリーニングされた別のファージクローンでは、A parasiticusのsugar utilization gene clusterで認められたヘキソースパーミアーゼ(hxtA)、α-グルコシダーゼ(glcA)、さらに転写因子(sugR)の遺伝子群がクラスターを形成していた。これらはいずれもアミノ酸レベルで90%以上の相同性を示し、麹菌のcounterpartと考えられる。しかし、このクラスターの遺伝子の発現はほとんど認められなかった。
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