黄色ブドウ球菌の白血球崩壊毒素の偏在の機構の解明-ファージ変換と発現調節機構-

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13660075
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 金子 淳 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30221188)
• キーワード: staphylococcus aureus / Panton-Valentine leukocidin / phage conversion / regulation

研究概要

(1)PVLのファージ変換の全貌及びPVL遺伝子の偏在性の機構の解明
(a)臨床分離株におけるPVL変換ファージ群の解析:研究協力者より収集されたPVL産生株のうちこれまでに10株からPVL変換ファージを単離した。現在、それらの塩基配列の決定を進めている。また、ファージとして回収できない株について、PCRを用いてPVL遺伝子並びに溶原化部位の解析を進めている。これまでに解析した株では所定の位置にPVL-変換ファージが溶原化していることが確認され、そのうち部はプロファージの型別に有効な結果が得られている。
(b)ファージの受容能の解析:φSLTを用い、PVL陰性S.aureus群におけるファージの宿主域を検討した。φSLTは用いた全ての株に吸着したことを確認した。感染しない株についてattB領域の解析を行った。その結果、全ての菌がattBを保有していたが、半数はその位置にPVL遺伝子を持たないファージが溶原化していた。現在溶原化しているファージのimmunityとの関係を解析中である。さらに(a)で得られた複数のPVL変換ファージの宿主域の検討を進めている。
(2)PVLの調節機構並びにPVLと病態との関係の解明(13-14年度)
具体的にはφSLTが溶原化してもPVLが発現しない様指示菌を複数得た。本菌における形質転換系を確立し、現在PVLの発現が回復する因子を解析するためのスクリーニングを行っている。一方、溶原化部位に存在する遺伝子構造に株による多様性があることを見出し、ファージの感染並びにPVLの発現との関係を解析中である。

研究成果

• [文献書誌] S.Narita, J.Kaneko, J.Chiba, Y.Pienont, S.Jarraud, J.Etienne, Y.Kamio: "Phage conversion of Panton-Valentineleukocidin (PVL) in Staphylococcus aureus : molecular analysis of a PVL-converting phage, φSLT"Gene. 268・1-2. 195-206 (2001)
• [文献書誌] 金子 淳: "ブドウ球菌の2成分性崩壊毒素のファージ変換"日本農芸化学会誌. 75・9. 939-947 (2001)
• [文献書誌] 金子 淳、冨田 敏夫、神尾 好是: "黄色ブドウ球菌の2成分性膜孔形成毒素の構造及び細胞崩壊機構"蛋白質核酸酵素. 46・4. 497-505 (2001)
• [文献書誌] A.Nishiyama, Marie Antonette Ruth V, Guerra, N.Sugawara, K.Yokota, J.Kaneko, Y, Kamio: "Identification of serine138 residue in the 4-residue segment K135K136T137S138 of LukS-I component of Staphylococcus intermedius leukocidin crucial for the LukS-I-specific function of staphylococcal leukocidin"Biosci. Biotechnol. Biochem.. 66・2. 328-335 (2002)
• [文献書誌] Y.Kamio, T.Tomita, and J.Kaneko: "Staphylococcal Infection and Immunity"Pore-Forming cytolysins from Staphylococcus aureus, α- and γ- hemolysins, and leukocidin. 330 (2001)