研究概要 |
(1)PVLのファージ変換の全貌及びPVL遺伝子の偏在性の機構の解明 (a)臨床分離株におけるPVL変換ファージ群の解析:研究協力者より収集されたPVL産生株のうち10株からPVL変換ファージを単離し、これまでに3株のファージゲノムを決定した。これらをφPVL並びにφSLTとの比較した結果、PVL変換ファージは頭部、尾部領域の違いからφPVL型、φSLT型の2つの型に大別されること、さらに各型は、調節・複製領域の違いでサブタイプに細分されることを見出した。以上の結果を踏まえ、(1)PVL並びにattRサイトのPCRによるPVL変換ファージの溶原化の確認、(2)キャプシド、並びにmajor tailをコードする領域のPCRによる2大型別、(3)調節・複製領域のPCRによる細分の3段階から成る、PVL保有株プロファージの型別システムを構築した。現在、PVL産生株のうち、PVL産生株の型別成績から、(1),(2)の段階では型別が可能である。しかし(3)の段階で型別できない株が数株見出されていることから調節・複製領域の異なる新たなPVL変換ファージの存在が示唆された。 (b)ファージの受容能の解析:φSLTのminer tailタンパク質であるORF636が菌体表層のテイコ酸の結合することを見出した。(a)の結果と合わせ、ORF636を有するφSLT型のファージのサブタイプにおける宿主域の違いは、調節・複製領域が関与していることを明らかにした。 (2)PVLの調節機構並びにPVLと病態との関係の解明 φSLTが溶原化してもPVLが発現しない様な指示菌の解析から、sigBあるいはagrによる調節系とは独立した調節系の存在を示唆する結果を得た。現在までにこれらの指示菌に対する形質転換系を確立し、PVLの発現が回復する因子を解析するためのスクリーニングを進めている。一方、溶原化部位が存在するorf及び周辺領域の遺伝子構造に株による多様性があることを見出した。 また本研究の過程で、S.intermediusのPVL型毒素LukS-I、Luk-FIによる白血球崩壊には、ロイコシジン及びPVLと同様に膜孔の形成並びにS型成分のリン酸化が必須であることを見出した。
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