研究概要 |
前年度はアカパンカビ(Neurospora crassa, IFO6068)のエンド1,6-β-D-グルカナーゼを精製し、その遺伝子(neg 1)をクローニングし、その塩基配列及びタンパクの一次構造を明らかにした。さらにneg1産物の大腸菌での発現に成功した。 本年度はneg1破壊株を作製し、遺伝子破壊による表現型の変化を観察した。 アカパンカビの遺伝子破壊はRIP法を用いて行い、胞子嚢形成が明瞭に認められた3種について胞子分離を行い、1,6β-D-グルカンを含む培地で、ハロー形成の有無で破壊株を選抜した。得られた破壊株のneg1の塩基配列を調べたところ、CからTへの置換が9箇所生じており、アミノ酸6残基に変異が生じていることが分かった。とくに662番目の塩基に生じた置換により208番目のグルタミン残基がストップコドンに変化しており、1,6-β-D-グルカナーゼ活性を消失していることが分かった。 得られたアカパンカビneg1破壊株は、陰イオン性界面活性剤SDS、および陽イオン性のCTABに対して感受性を示した。さらにSDS存在下では、細胞壁β-グルカンと親和性のあるコンゴーレッドに対して感受性を示した。界面活性剤に対する感受性増大は、細胞壁あるいは細胞膜蛋白に何らかの変化が生じた可能性があること、さらにGPIアンカーを解してβ-1,3-グルカンが結合していることが酵母で明らかにされていることから、GPIアンカーが関与する細胞壁関連の糖蛋白の構築にneg1が関係していることが推測される。
|