研究概要 |
下等真核微生物の中でも、酵母は培養液中にほとんど蛋白質を分泌しないが、A.nidulansおよび近縁の麹菌など糸状菌の多くは大量の蛋白質を分泌する。また、糸状菌は長大な菌糸体の中で蛋白質の大半を伸長先端ら分泌することが知られており、酵母に比較して発達した細胞内の蛋白質輸送系と細胞極性を有すると考えられる。酵母の分泌装置を形成する蛋白質群の中で、Usolpは780アミノ酸の頭部と約1,000アミノ酸のcoiled-coil構造の尾部からなる特異な構造を有し、小胞体から出芽した分泌小胞をゴルジ体膜に係留する過程に関与ると考えられている。 糸状菌A.Nidulansから、Uso1pの相同蛋白質をコードする遺伝子を単離しusoAと命名した。cDNAの配列との比較により、usoA遺伝子は5つのイントロンを有し1,103アミノ酸からなる蛋白質をコードしているこが推定された。予想されるusoAp蛋白質はuso1pとは25%、動物細胞の相同蛋白質P115とは28%の相同を示し、球状の頭部構造とcoiled-coi1構造の尾部およびC末端の酸性アミノ酸クラスターなどの構造的特徴に保存されていた。 A.nidulansにおけるusoA遺伝子の破壊株は取得できず、usoA遺伝子を誘導可能なプロモーターalcAに連結したalcA-usoAを染色体上のusoA遺伝子と置換したところ、alcA抑制培地での生育が認められなかったことからusoA遺伝子はA.nidulansの生育に必須と考えられる。alcA-usoA置換株分生子をalcA抑制培地で発させたところ、出芽位置が対称性を失い、菌糸がほとんど分岐せずに膨れあがり、隔壁がほとんど形成されなが異常形態が観察された。細胞骨格成分の局在性を観察したところ、アクチン及びキチンが菌糸壁にパッチ状異常局在していた。液胞局在性のCpyAの挙動をウェスタン解析により観察したところ、プロセシングが不完全な前駆体の蓄積がUsoA発現抑制株から観察された。以上より、UsoA蛋白質は、糸状菌細胞内の蛋白質輸および細胞極性の制御に関与していることが示唆された。
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