現代農業は大量の化学窒素肥料に依存しており、このことが化石燃料の大量消費、環境の富栄養化、温暖化の促進などという地球環境へかける負荷につながっている。そこで、この体質を改善するために世界的に見直されているのが、生物窒素固定を活用して必要な窒素源を現場で供給していくことである。スフィンゴモナス属窒素固定菌は当初イネ根圏から分離されたものであるが、その後イネの葉表面や葉内部からも分離されることが明らかになったことから、この菌は根圏と植物体内部の両面からイネに窒素を与える効率的な生物窒素肥料になりうる菌であると考えられる。 そこで、申請者が研究に用いているSphingomonas paucimobilisがイネ(豊雪矮性)のどの部位にコロナイズする性質を持つのかを解析するために、本菌にEGFP遺伝子を導入して標識することを目指した。予備解析で、本菌が形質転換しにくい菌であることが確認できたので、まず本菌に広宿主域ベクターであるpMFY42を導入するための三親伝達系の条件を検討し、遺伝子導入系を確立した。現在EGFP遺伝子をpMFY42に組み込み、これをS.Paucimobilisに導入することを試みているが、まだ形質転換株を得るには至っていない。また、本菌のより詳細な生育過程を解析するにはリアルタイムPCRによる本菌の測定をおこなうことが必要であると考え、本菌の16SrDNAの塩基配列を決定した。現在、この配列をもとにリアルタイムPCRの条件を検討しているところである。また、本菌を他の窒素固定菌とともに混合接種した際の菌叢全体の遷移を解析するために、DGGEによる検出系を検討しているところでもある。
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