研究概要 |
微生物の環状アミド代謝を物質生産に応用する研究に関して、含硫環状アミド化合物代謝を利用する光学活性α-メルカプト酸の生産について研究を行った。S体の光学活性α-メルカプト酸は、医薬品原料として近年注目を集めている。生産するα-メルカプト酸に3-フェニル-2-メルカプトプロピオン酸(PMPA)を選択し、対応する含硫環状アミド化合物である5-ベンジル-2,4-チアゾリジンジオン(BTH)の不斉加水分解によるS-PMPAの生成反応を微生物に探索した結果、Brevibacterium linens C-1株に目的の活性を見いだした。本菌は2日間の反応において10mMのラセミ体BTHより約7mMのS-PMPAを光学純度80.1%e.e.にて生成した。本反応を触媒する酵素を単離精製し諸性質を検討した結果、本酵素はBTH、5-メチル-2,4-チアゾリジンジオン、2,4-チアゾリジンジオン以外にアラントインに良好に作用し、本来プリン塩基代謝にて機能する1酵素であることが予想された。さらに、本酵素をコードする遺伝子をクローニングし塩基配列の解析を行った結果、936bp、312アミノ酸から成る配列が決定された。本酵素.はアラントイナーゼ活性を示すが、既知アラントイナーゼとの配列上の相同性は見られなかった。また、この遺伝子を大腸菌に導入し、本酵素を大量発現する形質転換大腸菌を構築した。本大腸菌はラセミ体BTHより光学純度81.2%e.e.にてS-PMPAを生成した。一方、本酵素が核酸塩基代謝に関連したものであったことから、ピリミジン塩基の微生物代謝について検討を加え、その酸化的分解代謝系の詳細を初めて明らかにした。特に、環状アミド化合物であるバルビツール酸の加水分解酵素バルビチュラーゼについて諸性質を明らかにした。
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