タンパク質リン酸化反応は、細胞内シグナル伝達の中核を担う酵素反応である。一般的には、さまざまな外的シグナルが細胞内に伝達される過程でそのシグナルに特異的なタンパク質のリン酸化が起こり、リン酸化されたタンパク質の活性化・不活化を経て最終的な細胞の応答反応が現れる。Aキナーゼ(cAMP依存性プロテインキナーゼ)は、酵母からヒトに至るまで高度に保存されたリン酸化酵素であり、細胞内生理機能に重要な役割を果たしている。酵母においてAキナーゼは、グルコースなどの栄養源シグナルに応答して細胞内cAMPレベルが上昇することで活性化し、細胞の増殖・分化のスイッチングを行っている。 本年度においては、出芽酵母を対象としてAキナーゼによってリン酸化されるタンパク質の包括的な解析を行うため、まずAキナーゼが構成的に活性化した株を構築した。Aキナーゼは、触媒サブユニットおよび調節サブユニットからなる4量体を構成するが、cAMPが調節サブユニットに結合することで、触媒サブユニットが調節サブユニットから遊離することで活性化する。そこで、調節サブユニットBCY1遺伝子を破壊した株を構築した。また、3種類あるAキナーゼ触媒サブユニット遺伝子のうち2つが欠損した株と組み合わせることで、それぞれの触媒サブユニットのみが活性化した株を構築した。これらの株を用いて遺伝子発現のプロファイルをDNAチップを用いて調べどのようなシグナルの系が活性化されているかについて検討を行っている。
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