研究課題
(1)ヒト由来ビタミンD_325位水酸化酵素(CYP27A1)および1α位水酸化酵素(CYP27B1)の構造と機能くる病患者由来ミスセンス変異型8種の変異箇所について、部位特異的変異により種々の変異体を作製し、その性質を調べた。さらに、CYP27B1と同じファミリーに属し、わずかながらビタミンD_31α位水酸化活性を示すCYP27A1にも変異を導入し、これを解析することによってCYP27B1の変異箇所のアミノ酸残基の役割を推定することを試みた。実験結果から、Arg107、Gly125およびPro497はCYP27B1の立体構造の安定維持に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、Asp164は構造維持とともにプロトン供与などの機能にも重要な役割を果たしている可能性が示唆された。Thr321は酸素の活性化に重要な役割を果たしていることが示唆され、また、Arg389およびArg453はヘムとの結合に関わると考えられた。得られた知見を元にコンピューターによりCYP27B1およびCYP27A1の立体構造を推測し、ビタミンD_3およびその誘導体の結合様式の解明を試みている。(2)ヒト由来ビタミンD_324位水酸化酵素によるD_3誘導体の代謝ヒト由来ビタミンD_324位水酸化酵素を大腸菌で発現させ、また、活性を上昇させるためにアドレノドキシンおよびNADPH-アドレノドキシン還元酵素との同時発現を試みた。組換え大腸菌の菌体培養液あるいは膜画分に、副甲状腺冗進症の治療薬であるビタミンD_3-ヘキサフルオロ体を添加し、代謝産物をHPLCおよび質量分析計により分析した。その結果、ビタミンD_3-ヘキサフルオロ体は23S位水酸化体、続いて23位オキソ体、さらに構造未知の代謝物へと変換されることがわかった。また、別の代謝経路として側鎖が切断され完全に不活化される代謝が認められた。23S位水酸化に始まる代謝経路の最後の代謝物はラット由来CYP24には見られず、CYP24によるビタミンD_3-ヘキサフルオロ体の代謝において動物種差が存在することが明らかになった。腎臓、小腸、骨組織等、ビタミンD_3の標的臓器においてCYP24は代謝酵素として中心的役割を果たしており、ヒト由来CYP24を含む膜画分および菌体が医薬用ビタミンD_3誘導体のヒト体内における代謝を予測するシステムとして有用であることが示唆された。
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