本研究では、植物におけるアスコルビン酸生合成の最終段階に関与しているL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素に着目した。L-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素はL-ガラクトノ-γ-ラクトンを基質に、これを酸化することでアスコルビン酸を生合成する酵素である。これまでにカボチャとタバコのL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素cDNAがクローニングされている。しかし、単子葉植物においてはL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素cDNAクローニングの報告がない。そこで今回単子葉植物のイネのL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素のcDNAクローニングを行った。 RT(reverse transcription)-PCR法、RACE(rapid amplification of cDNA ends)法を用いて、イネのL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素cDNAのクローニングを試みた。結果的には、全鎖のイネL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素cDNAは得られず、5'-末端が一部欠落していた。クローニングされたcDNAから推定されるイネのL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素のアミノ酸配列をカボチャ、タバコ、サツマイモ、カリフラワーのものと比較したところ、非常に高い相同性を示した。この結果から、L-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素は単子葉植物にも発現していることがわかり、植物界に非常に高く保存されていることがわかった。また、推定アミノ酸配列中にはミトコンドリアへの移行シグナルと思われる配列が認められた。 イネ植物体におけるL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素の組織特異性を調べた。まず、L-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素mRNAの発現量を調べるために、ノーザンブロッティングを行った。培養細胞との比較のため、培養4日目のイネ培養細胞についてもL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素mRNAの発現量を調べた。ノーザンブロットの結果から、L-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素mRNAの発現量は、葉よりも根において若干高い発現が示された。次にこれらの各組織からミトコンドリア画分を抽出し、イムノブロッテイングによってL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素タンパク質の検出を行った。その結果、イネの根および葉において56kDのL-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素タンパク質が認められた。 現在、L-ガラクトノ-γ-ラクトン脱水素酵素遺伝子をイネに導入し、過剰発現させることによりアスコルビン酸高含量遺伝子組換えイネが作成可能かどうか検討中である。
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